人間用の防災リュックを用意しても、犬がいる家庭ではそれだけでは足りません。かといって「ペット用防災セット」を1つ買えば安心、というわけでもありません。
犬の防災でまず確認すべきは、普段使っている用品を、避難時に必要な役割ごとに点検することです。そのうえで足りないものだけを買い足す。
この記事では、犬との避難で必要になる備えを「移動/水・食事/排泄/身元確認」の4つの役割で整理し、用途別に候補となる商品を紹介します。
犬と避難するなら「専用セット」より先に4つの役割を確認
ペット用防災セットだけで完結させないことが、この記事でもっとも伝えたい結論です。
犬との避難で確認したい役割は次の4つです。
① 移動・逸走防止:キャリー、クレート、リード、首輪・ハーネスなど
② 水・食事:普段のフード、水、給水用品など
③ 排泄・衛生:ペットシーツ、排泄物処理袋など
④ 身元確認・情報:迷子札、マイクロチップ登録情報、写真、飼い主の連絡先など
普段使っている用品を軸に不足品を補うという順番で考えると、無駄な買い足しを避けられます。
なお、療法食や常用薬が必要な犬は、この4分類とは別に優先して準備内容を確認してください。 具体的な投薬量や代替方法の判断は、平時にかかりつけの獣医師へ相談することが基本です。

「同行避難」は避難所で一緒に過ごせるという意味ではない
環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」では、災害時のペットの扱いについて、飼い主が飼養しているペットを同行し、安全な場所まで避難する行動を「同行避難」、避難所等で飼い主がペットを飼養管理する状態を「同伴避難」として区別しています。
重要なのは、「同行避難=避難所で同室とは限らない」という点です。同行避難は避難場所まで一緒に行く行動そのものを指し、避難所内でペットと同じ部屋で過ごせるかどうかは別の話です。横浜市「災害時のペット対策ガイドライン~震災編~」でも、ペット同行避難とは地域防災拠点などの避難所へペットとともに避難することであり、避難所内で同室飼育できることではないと説明されています。

ペットの受け入れ可否や飼育場所、ケージ・キャリーの要否は自治体・避難所によって異なります。避難先のルールを平時に確認しておくことが、いざというときの行動を左右します。
犬との避難でまず確認したい持ち物
環境省ウェブサイト「ペットの災害対策」では、十分な水や食料のほか常備薬等を用意し、避難所や避難ルートを確認しておくこと、日頃からキャリーバッグやケージに入ることに慣れさせておく必要があると案内されています。
備蓄量についても、環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」では、フード・水を少なくとも5日分、できれば7日分以上用意することが案内されています。横浜市「災害時のペット対策ガイドライン~震災編~」でも同様に、地域防災拠点にはペットフードやケージ等の備蓄がないため、少なくとも5日分以上(できれば7日分以上)の物資を入れた「ペット用非常持出袋」を準備するよう案内されています。例として挙げられているのは、フード、水、薬、ペットシーツ、リード、糞尿処理用具、飼育手帳(飼い主の連絡先、ペットの写真等)です。
まず、次の中からすでに家にある物を確認し、買い足しが必要な物だけを切り分けましょう。
- 普段のフード・水
- 常用薬
- リード・首輪
- キャリー・クレート
- ペットシーツ・処理袋
- 迷子札・写真・連絡先メモ
移動用品は犬のサイズと避難先のルールで選ぶ
キャリー・クレートは犬の体格によって適合が大きく変わります。「小型犬ならこれ」という一律の推奨はできないため、メーカーが対象体重・サイズを明示している商品で、自分の犬の体格と照合することが基本になります。
アイリスオーヤマ公式「エアトラベルキャリー ATCシリーズ」
移動用のキャリーとして室内でのハウス使用も想定された、ポリプロピレン製のハードタイプです。前扉は左右両開きで取り外しも可能。本体にフードや水を入れる食器が付属します。
サイズは4展開あり、メーカー公式の適合犬サイズ(目安)は以下の通りです(アイリスオーヤマ公式「エアトラベルキャリー」商品ページより)。
| サイズ | 商品サイズ(外寸) | 商品内寸 | 重量 | 適合犬サイズ(目安)・耐荷重 |
|---|---|---|---|---|
| ATC-460 | 幅29×奥行46×高さ28.5cm | 幅22×奥行39.5×高さ24.8cm | 約1.7kg | チワワ等、5kg未満の超小型犬 |
| ATC-530 | 幅37.5×奥行53.5×高さ37cm | 幅28×奥行45×高さ35cm | 約3kg | ミニチュアダックス等、12kg未満の小型犬 |
| ATC-670 | 幅47×奥行67×高さ51cm | 幅35×奥行56×高さ49cm | 約5.2kg | コーギー、柴等、20kg未満の中型犬 |
| ATC-870 | 幅62×奥行87×高さ65.5cm | 幅49×奥行75.5×高さ63.5cm | 約11.4kg | ゴールデン・レトリバー等、35kg未満の大型犬 |
メーカーが示す適合種・耐荷重だけでなく、商品内寸も確認し、自分の犬の体格に合うサイズを選びましょう。サイズ表記だけで判断せず、内寸と実際の犬の体格を照らし合わせてください。
また、サイズが大きくなるほどキャリー本体も重くなるため、犬の体格だけでなく、避難時にどのように運ぶかも確認しておきましょう。ATC-530でも本体約3kg、ATC-870では約11kg台になり、犬自身の体重に加えてキャリーの重さも運ぶ前提になります。

環境省ウェブサイト「ペットの災害対策」では、日頃からキャリーバッグやケージに入ることに慣れさせておくよう案内しています。
水・食事用品は普段使いできる携帯性で選ぶ
犬用の防災フードを一律に推奨することはしません。環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」では、少なくとも5日分、できれば7日分以上のフード・水を用意するとともに、救援物資では普段使用しているフードと同じものが手に入るとは限らないとして、平時からの備蓄を案内しています。療法食やアレルギーがある場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。
ここでは、普段の散歩でも防災でも使える携帯型の給水用品を紹介します。
リッチェル「お散歩ハンディシャワー S」
市販のペットボトルに取り付けて使うタイプの携帯用品です。おしっこ跡のマナー洗浄と、お散歩中の水分補給の2WAYで使えます。受皿の向きを変えることで、シャワーと給水器の2通りの使い方ができ、リードやバッグに引っ掛けられるカラビナが付いています。
リッチェル公式「お散歩ハンディシャワー S・M」では、Sサイズ(品コード059957)について次の仕様が確認できます。
- サイズ:幅7.2×奥行7.8×高さ13.8cm
- 重量:約32g
- 受皿容量:49.5mL
- 対象:超小型犬・小型犬用(カラビナ耐荷重1kg)
- 材質:受皿・ネジキャップ=ポリプロピレン、シャワーキャップ=ポリエチレン、カラビナ=アルミ
中型犬など受皿がもう少し大きい方がよい場合は、同シリーズのMサイズ(受皿容量105mL・小型犬~中型犬用)も選択肢になります。
普段の散歩から使っておくことで、避難時にも同じ使い方でそのまま持ち出せます。
排泄用品は避難先で持ち運べることまで考える
避難所での排泄物処理は飼い主の責任で行う前提となるため、防臭仕様の処理袋を携帯しておくと、避難先でも排泄物を持ち運びやすくなります。
クリロン化成公式「うんちが臭わない袋BOS ペット用」
医療用製品の開発技術から生まれた防臭素材「BOS」を使った排泄物処理袋です。1枚ずつ取り出しやすい仕様になっています。
- サイズ:17cm×27cm
- 枚数:20枚(携帯用の少量パック、袋色は水色)
- 使い方:排泄物を袋に入れて結び、ゴミ箱に廃棄
「臭わない」と断定はできませんが、防臭素材「BOS」を使用していることはメーカー公式サイトで確認できます。ペットシーツは、普段使っているものを持ち出し用として準備しておく方法もあります。
身元確認は「買う物」だけではない
はぐれた場合の身元確認は、必ずしも新規購入を必要としません。
- 迷子札(首輪に装着)
- マイクロチップの登録情報
- 犬の写真(スマホと紙の両方)
- 飼い主の連絡先を記した飼育手帳・メモ
- ワクチン接種状況などの健康情報
マイクロチップの登録義務など制度に関わる内容は、環境省の最新情報を確認したうえで扱う必要があります。この記事では、平時に情報を整理しておくことの重要性にとどめます。
犬用防災セットを買う場合も不足品を確認する
市販のペット防災セットを使う場合は、「移動/水・食事/排泄/身元確認」の4つの役割のうちどこまでカバーしているかで見てください。点数の多さは優劣の基準になりません。セット内容を確認し、自宅にある用品と重複する物、不足する物を確認しましょう。
まとめ
犬との避難では、普段使っている用品を「移動/水・食事/排泄/身元確認」の4つに整理し、足りない物だけ追加することが基本です。
そのうえで、避難先のペット受入ルールを平時に確認しておいてください。同行避難ができることと、避難所で犬と同室で過ごせることは別の話です。自分の犬の体格・性格・普段の生活に合わせて、必要な分だけ備えを整えましょう。
なお、フードの賞味期限や非常持出袋の中身は、時間が経つと確認を忘れがちです。点検の時期をカレンダーアプリなどに登録しておくと、備えを維持しやすくなります。

