防災ラジオは、「手回し式だから安心」「乾電池式だから古い」という分け方だけでは選びにくい用品です。長時間の停電を考えるなら、先に決めたいのは、普段どの電源でラジオを動かし、その電源が切れたときに何でつなぐかです。
予備の乾電池を一緒に管理できるなら、乾電池式は充電残量を気にせず使い始められ、長時間の情報収集にも向きます。手回し充電に対応したモデルは、乾電池や家庭の電源が使えない場面でも発電できるのが強みです。
ただし、手回し機能が付いているだけで長時間使えるわけではありません。メーカーが示す「何分回すと、何分ラジオを聞けるか」まで確認し、主電源と非常時の予備電源を分けて考えると選びやすくなります。
防災ラジオは「手回しか乾電池か」より主電源と予備電源で考える
内閣府の「令和8年度「防災週間」及び「火山防災の日」について」では、非常用持出品としてラジオと乾電池を準備するよう案内しています。内閣府の広報誌「ぼうさい」第115号でも、ラジオは受信機と乾電池があれば使える情報手段で、大規模災害で重要な役割を果たしてきたと紹介されています。
停電中の情報収集をスマートフォンだけに集中させず、ラジオという別の受信手段を持っておく意味はここにあります。
そのうえで、ラジオ本体の電源は次のように分けると整理しやすくなります。
- 乾電池を主電源にする
- 内蔵充電池を普段から充電しておく
- 手回し発電を電池切れ時の予備にする
- 乾電池と内蔵充電池の両方を使える機種を選ぶ
「手回し対応」と書かれているだけでは、停電が長引いたときの使い方までは見えてきません。何を主電源にして、何をバックアップにするかを先に決めておくと、機種選びで迷いにくくなります。

乾電池専用・充電式・複数電源の3台を比べる
電源方式の違いが分かるよう、今回は3つのタイプを1台ずつ取り上げます。
この表で判断したいのは、「機能が多いモデルはどれか」ではありません。予備電池を交換しながら使いたいのか、内蔵電池を充電して備えたいのか、両方を使えるようにしたいのかを、自分の備え方に合わせて見きわめるための表です。
| モデル | 電源の考え方 | ラジオ使用時間の公式目安 | 重量 |
|---|---|---|---|
| Panasonic RF-P155 | 単3形乾電池×2 | FM約71時間/AM約78時間 | 約162g |
| アイリスオーヤマ JTL-29 | 内蔵充電池。USB・手回し・ソーラーで充電 | 満充電で約25時間 | 約300g |
| SONY ICF-B300 | 単3形乾電池×2+内蔵充電池。手回し・USB AC・太陽光充電 | 乾電池:FM約77時間/AM約90時間 | 約395g |
RF-P155の数値は、パナソニックのEVOLTAを使い、スピーカーで受信した場合のものです。JTL-29は中音量で満充電した内蔵電池を使った場合、ICF-B300は単3形アルカリ乾電池を使った場合の数値です。
測定条件も電源も違うため、使用時間の数字だけで3台の優劣は決めません。見比べたいのは、「その時間を得るために何を準備しておく必要があるか」です。
予備の乾電池でつなぎたいなら|Panasonic RF-P155
Panasonic RF-P155は、単3形乾電池2本で動くシンプルなFM/AMラジオです。パナソニックの現行商品一覧にも掲載されています。
付属の乾電池EVOLTAを使い、スピーカーで聞いた場合の電池持続時間は、FM約71時間、AM約78時間です。乾電池を含めて約162gで、今回の3台では最も軽くなっています。
手回し充電、スマートフォンへの給電、LEDライトはありません。その分、停電時にラジオを聞くという目的に対して、「本体と予備の単3形乾電池を用意する」という備え方が分かりやすいモデルです。
乾電池式を選ぶなら、本体だけを防災袋へ入れて終わりにせず、交換用の単3形乾電池も一緒に管理します。
内蔵電池を充電して備えるなら|アイリスオーヤマ JTL-29
アイリスオーヤマのJTL-29は、2850mAhの内蔵リチウムイオン電池で動く手回し充電ラジオライトです。USB充電、手回し充電、ソーラーパネル充電に対応し、乾電池は使いません。
メーカー公表の連続使用時間は、満充電でAM/FMラジオ約25時間です。USBで満充電にする目安は約4~6時間です。
手回しは、130回転/分で1分間充電すると、ラジオを約5~7分使える目安が示されています。乾電池がなくても発電できる点は強みですが、メーカー目安では1分間の手回しで約5~7分です。平時にUSBで充電しておき、手回しは内蔵電池が少ないときの補助として考えると、電源の役割を分けやすくなります。
ソーラーパネルでも充電できますが、メーカーの条件では満充電まで約90~100時間が目安です。USB充電のように短時間で満たせる機能ではありません。
JTL-29はIPX3の防滴性能があり、LEDライトとSOSアラーム、USB Type-Aからのスマートフォン給電にも対応しています。多機能さに目がいきがちですが、まず確認したいのは、停電前に内蔵電池を充電した状態で維持できるかどうかです。
乾電池と手回しの両方を残したいなら|SONY ICF-B300
SONY ICF-B300は、内蔵充電池と単3形アルカリ乾電池2本の両方で使えるFM/AMラジオです。内蔵充電池は、手回し、USB AC、太陽光で充電できます。
単3形アルカリ乾電池を使い、スピーカーで受信した場合は、FM約77時間、AM約90時間です。USB ACで内蔵充電池を約4時間充電してほぼ満充電にした場合は、FM約30時間、AM約36時間がメーカー資料の目安です。
手回しは、約1分間、1秒に約2回転の速さでハンドルを回すと、FM約41分、AM約61分使える目安が示されています。
乾電池を主電源にしながら、乾電池が切れた後にも、充電済みの内蔵充電池や手回しという別の経路を残せます。その代わり、本体は乾電池を含めて約395gあり、RF-P155より重くなります。
IPX4の防滴仕様、LEDスポットライト、スマートフォンへの給電にも対応します。ただし、SONYはラジオを聞きながらスマートフォンを充電することはできないと案内しています。
手回しラジオは「ハンドルがあるか」ではなく、回した後に何分聞けるかを見る
手回しラジオで見落としやすいのが、手回し発電をしたあとの使用時間です。
たとえばJTL-29は、130回転/分で1分間充電すると、ラジオは約5~7分です。一方、ICF-B300は、約1分間、1秒に約2回転で回すと、FM約41分、AM約61分です。
ただし、この差だけで製品の優劣は決められません。メーカーごとに測定条件も設計も違うからです。
それでも、2製品を並べるだけで分かることがあります。「手回し対応」という表示だけでは、実際に何分情報を聞けるのかが分からないということです。
購入前には、「手回し1分で何分聞けるか」「内蔵電池が満充電なら何時間聞けるか」「乾電池でも動くか」を分けて確認します。
長時間の停電では、手回しだけに頼らない電源計画を考える
停電直後に数分だけ情報を確認する場合と、停電が長引くなかで何度もラジオを聞く場合とでは、必要な電源の考え方が変わります。
乾電池専用のRF-P155は、単3形乾電池2本が電源です。切れたら新しい2本に交換するため、予備電池を何セット用意しているかが、そのまま使い続けられる時間につながります。
JTL-29は、停電前に内蔵電池を充電しておくことが主な備えです。満充電なら約25時間という目安がありますが、収納したまま長期間点検しなければ、いざというときの残量は分かりません。
ICF-B300は、内蔵充電池に加えて単3形乾電池も使えます。充電残量だけに頼りたくない一方で、乾電池がなくなった後の手回しも残したい場合に比べやすい構成です。
機能の数より大切なのは、停電初日から数日後まで、どの電源を順番に使うのかを決めておくことです。
夜8時に停電し、収納していたラジオを取り出した場面を考えてみます。
乾電池式のRF-P155なら、本体と一緒に保管している単3形乾電池2本があれば、その場で電源を入れられます。交換用も備えてあれば、電池が切れた後も入れ替えて使い続けられます。
JTL-29は乾電池を使わないため、取り出した時点で内蔵電池に残量があるかどうかが分かれ目です。残量がなければ、手回しやソーラーなどで電力を作ることになります。
ICF-B300なら、内蔵電池の残量が少なくても、単3形乾電池2本に切り替える手があります。乾電池もなければ、その次の手段として手回しが残ります。
同じ「防災ラジオ」でも、停電した瞬間に何が用意されていれば聞けるのかは違います。購入時に「停電した最初の1時間は何で動かすか」を決めておくと、自分に必要な電源方式が見えてきます。
スマホ充電機能は便利でも、ラジオの主目的とは分けて考える
手回しラジオには、スマートフォンへ給電できるモデルがあります。今回の3台では、JTL-29とICF-B300が対応しています。
ただ、「スマホを満充電できるか」だけを見て選ぶと、情報収集用というラジオ本来の目的がぼやけます。給電の条件や実際に使える時間は、製品ごとに違います。
ICF-B300では、ラジオを聞きながらスマートフォンを充電することはできません。JTL-29も、スマートフォンの使用時間は機種やバッテリーの状態で大きく変わるとメーカーが注意しています。
スマートフォンの電源は、モバイルバッテリーやポータブル電源などと合わせて考えます。ラジオ側では、まず「情報を受信し続けられる電源があるか」を優先します。
スマートフォン用の電源まで見直したい場合は、必要な充電回数からモバイルバッテリーの容量を決める考え方と、モバイルバッテリーだけで足りるのか、ポータブル電源まで必要なのかを分けて考えると整理しやすくなります。下の2記事で、それぞれの選び方を詳しく整理しています。


買ったら一度、停電を想定してラジオだけで情報を聞いてみる
防災ラジオは、箱に入れたまま保管するより、平時に一度動かしておくほうが、非常時の迷いを減らせます。
確認しておきたいのは、次のような点です。
- 自宅でAM・FMのどの局を受信できるか
- アンテナや選局つまみをどう操作するか
- 乾電池をどこから入れるか
- 内蔵充電池をどう充電するか
- 手回しハンドルをどの程度の速さで回すのか
- イヤホンを使う場合はどこへ接続するか
乾電池式なら、予備電池もラジオと一緒に取り出せる場所に置きます。充電式なら、電源が入るかを定期的に確認できる置き方にしておきます。
非常時に初めて周波数を探したり、充電方法を調べたりするのではなく、明るい時間に一度使っておけば、停電時にも落ち着いて情報を取りやすくなります。
まとめ|手回しの有無ではなく「何で長く聞くか」で選ぶ
防災ラジオは、手回し式と乾電池式のどちらか一方が常に優れているわけではありません。
選び方は、次のように整理できます。
- 予備の単3形乾電池を一緒に管理し、シンプルに長時間使いたい → 乾電池式
- 平時に内蔵電池を充電し、乾電池なしでも使える手段を残したい → 手回し対応の充電式
- 乾電池を主電源にしながら、内蔵電池・手回しも残したい → 複数電源対応
手回し機能は、「付いているから安心」ではなく、何分回すと何分聞けるのかまで確認します。乾電池式は、「電池で長く動く」だけで終わらせず、交換用の乾電池を一緒に備えるところまでがセットです。
防災ラジオを選ぶときは、停電した瞬間の電源と、その電源が切れた後の次の手段を決めておく。そこまで考えておくと、自分に合う電源方式を選びやすくなります。
