停電が起きると、スマートフォンの充電は早い段階で困りやすい問題です。連絡、情報収集、地図、決済など、スマホを使いたい場面は災害時にも少なくありません。
そこで備えておきたいのがモバイルバッテリーですが、商品を見ると「5,000mAh」「10,000mAh」「20,000mAh」と数字が並びます。数字が大きい方が安心そうに見える一方、大容量になるほど重くなるため、防災用でも最大容量を選べばよいとは限りません。
最初に考えたいのは、mAhの数字ではなく、停電したときにスマホをあと何回くらい充電したいかです。
1回分の予備があればよいのか、2回ほど余裕がほしいのか、家族のスマホも含めて複数回充電したいのか。必要な回数が決まれば、候補となる容量も見えてきます。
防災用は「あと何回充電したいか」から容量を決める
モバイルバッテリーを選ぶとき、最初から「何mAh必要か」を決める必要はありません。
先に考えるのは、停電中にどのくらいスマホを使い続けたいかです。たとえば、外出先や避難時の予備として1回分あればよい人と、自宅で停電が続いたときに何度も充電したい人では、必要な容量が変わります。
目安は、次の3段階で考えると分かりやすくなります。
- スマホ1台を1回程度充電できる予備がほしい
- スマホ1台を2回前後充電できる余裕がほしい
- 1台を複数回、または家族のスマホも充電したい
ここでは、まだ細かな数字を覚える必要はありません。
「自分は何回分ほしいのか」を先に決めて、そのあとで容量を見る。これが防災用モバイルバッテリーを選ぶ基本です。
スマホだけでなく、USB充電式ランタンも同じモバイルバッテリーから充電する予定なら、その分も使う前提で容量を考えます。停電時の照明を電池式と充電式のどちらにするか迷う場合は、別の記事「防災ランタンは電池式と充電式どっち?停電時の使いやすさを比較」で、予備電池・充電管理・停電中の給電方法から選べます。

10,000mAhでも「スマホを3回」とは限らない
mAh(ミリアンペアアワー)は、モバイルバッテリーの容量を表す数字です。
イメージとしては、電気をためておくタンクの大きさに近いものです。5,000mAhより10,000mAh、10,000mAhより20,000mAhの方が、大きなタンクだと考えると分かりやすくなります。
ただし、タンクに入っている電気を100%そのままスマホへ移せるわけではありません。
たとえば、10,000mAhのモバイルバッテリーと3,000mAhのスマホを見て、「10,000÷3,000だから3回以上充電できる」と考えたくなります。しかし、実際にはスマホへ電気を送る途中で変換ロスが生じます。

Anker Japan「モバイルバッテリーの容量はどれくらいがおすすめ?」でも、表記容量より実際に充電へ使える量は少なくなることが案内されています。また、スマホの電池容量や、充電しながらスマホを使うかどうかによっても、実際の充電回数は変わります。
mAhをスマホの電池容量で割った数字を、そのまま満充電回数にはできません。
そこで商品を比べるときは、メーカーが同じ条件で示している充電回数を目安にすると分かりやすくなります。

5,000・10,000・20,000mAhは「軽さ・バランス・余裕」で考える
容量の数字だけでは違いが分かりにくいため、防災用では次の3つの言葉に置き換えて考えると整理しやすくなります。
| 容量帯 | 覚え方 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 5,000mAh級 | 軽さ | 1回程度の予備を軽く持ち歩きたい |
| 10,000mAh級 | バランス | 充電回数にも余裕を持たせつつ、重くしすぎたくない |
| 20,000mAh級 | 余裕 | 1台を複数回、または複数台のスマホを充電したい |
5,000mAh級は、できるだけ荷物を軽くしたい場合の候補です。
10,000mAh級は、5,000mAh級より充電できる余裕を増やしつつ、20,000mAh級ほど重くしたくない場合に選びやすい容量帯です。
20,000mAh級は、持ち運びやすさよりも、停電中に複数回充電できる余裕を優先したい場合の候補になります。
「5,000・10,000・20,000」という数字を覚えるより、「軽さ・バランス・余裕」のどれを優先するかで考える方が選びやすくなります。
防災用は「大容量を1台」だけでなく、複数に分けてもいい
必要な容量を、1台のモバイルバッテリーだけで確保する必要はありません。
たとえば、公称容量だけを見れば、20,000mAhを1台持つ方法もあれば、10,000mAhを2台持つ方法もあります。
1台にまとめれば、充電や保管を管理する数は少なくなります。一方、複数台に分ければ、普段持ち歩くバッグと自宅など、置き場所を分けることができます。
すでに普段使いのモバイルバッテリーを持っているなら、それを防災にも使いながら、自宅用を追加する方法もあります。
ただし、10,000mAhを2台持てば、20,000mAhの1台と実際の充電回数が必ず同じになるわけではありません。製品ごとに実際に使える電力量や変換効率が異なるため、公称容量の合計はあくまで目安です。
また、普段使いと兼用する場合は、いざというときに残量がほとんどない状態にならないよう、定期的に残量を確認しておきます。
大容量を1台持つ方法だけが答えではありません。持ち歩き用と自宅用に分けるなど、自分が管理しやすい形で備えることもできます。

容量が決まったら「重さ・充電速度・端子・PSE」を確認する
必要な充電回数から容量の候補が決まったら、次に使い勝手を確認します。
- 重量:持ち出すなら無理なく持てるか
- 充電速度:スマホが対応する範囲で十分な出力があるか
- 端子:USB Type-CやUSB-Aなど、手持ちのケーブルと組み合わせられるか
- ケーブル付属の有無:別に用意する必要があるか
- PSE:PSEマークが表示されているか
充電速度を見るときに出てくるのが、W(ワット)です。
mAhが「電気をためるタンクの大きさ」なら、Wは蛇口から水を出す速さのようなものです。
大きなタンクだからといって、水が速く出るとは限りません。同じように、容量が大きいモバイルバッテリーだからといって、必ず速く充電できるわけではありません。

今回比較する3つの製品でも、20,000mAhの商品より10,000mAhの商品の方が最大出力は高くなっています。
そのため、まずは容量で「何回くらい充電したいか」を決め、充電速度も重視する場合は最大出力を確認します。
消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう」では、製造・輸入事業者や型式、仕様、連絡先が確かな製品を選ぶことや、PSEマークを確認することが案内されています。
今回比較する3つのモバイルバッテリーはいずれも、エレコムが電気用品安全法の技術基準への適合を明記しています。
購入後も、高温になる場所や強い衝撃を避け、膨らみや異常な発熱などがあれば使用を中止します。リコール情報も確認しておきます。
停電時にスマホやUSB機器だけでなく、コンセントを使う家電まで動かしたい場合は、モバイルバッテリーだけで足りるかを一度見直します。『一人暮らしにポータブル電源は必要?モバイルバッテリーで足りる人との違い』では、使いたい機器からどちらを選ぶかを確認できます。

3つのモバイルバッテリーは「何回充電できるか」と「重さ」を中心に比較する
ここからは、エレコムの5,000mAh・10,000mAh・20,000mAhの3つのバッテリーを比べます。
3製品はいずれも、3,000mAhのスマートフォンを電源オフで充電した場合の回数がメーカーから示されています。
3,000mAhは比較のための共通条件で、すべてのスマホに当てはまる容量ではありません。
自分のスマホで何回充電できるかを断定する数字ではなく、3バッテリーの容量差を見るための目安として使います。
表でまず見るのは、「何回くらい充電できるか」と「どのくらい重いか」の2つです。
| 製品名 | 容量 | メーカー目安の充電回数※ | 重量 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| エレコム DE-C45-5000WH | 5,000mAh | 約1.1回(1回分+少し) | 約112g | 軽さを優先したい |
| エレコム EC-C41LBK | 10,000mAh | 約1.9回(2回弱) | 約190g | 容量と軽さのバランスを取りたい |
| エレコム DE-C52-20000BK | 20,000mAh | 約3.9回(4回弱) | 約420g | 複数回の充電に余裕を持たせたい |
※各製品を満充電した状態から、電源オフの3,000mAhスマートフォンを充電した場合のメーカー目安です。実際の回数は、スマホの電池容量や使用状況によって変わります。
この3製品では、5,000mAhから10,000mAh、20,000mAhへ容量が増えるほど、充電できる回数の目安も増えます。一方、重量も約112g、約190g、約420gと増えていきます。
数字を細かく覚える必要はありません。
まずこの違いを押さえ、そのあとで最大出力や端子などの仕様を確認します。電に余裕を持たせたいなら20,000mAh級が候補です。充電速度も気になる場合は、最後に最大出力を確認します。
軽さを優先するなら|エレコム DE-C45-5000WH(5,000mAh)
できるだけ軽く持ち出し、スマホ1回程度の予備を想定するなら、5,000mAh級の候補です。
厚さ約13.5mm、重量約112gの薄型・軽量モデルです。
エレコム公式「薄型コンパクトモバイルバッテリー(5000mAh/3A/C×1+A×1)」では、満充電した状態で3,000mAhのスマートフォンを約1.1回充電できる目安が示されています。
USB Type-C×1とUSB-A×1を備え、USB Type-C-USB-Aケーブルが約0.1m付属します。電気用品安全法(PSE)の技術基準に適合しています。
今回の3つのモバイルバッテリーの中では最も軽いため、持ち出しやすさを優先したい人に向きます。より充電回数に余裕がほしい場合は、10,000mAh級以上と重さを比べます。
容量と軽さのバランスなら|エレコム EC-C41LBK(10,000mAh)
「1回分だけでは少し心配だけれど、20,000mAh級ほど重くしたくない」という場合に候補になるのが10,000mAh級です。
公称容量10,000mAh、重量約190gです。
エレコム公式「コンパクトモバイルバッテリー(10000mAh/30W)」では、満充電した状態で3,000mAhのスマートフォンを約1.9回充電できる目安が示されています。
USB Type-Cは単独で最大30W出力に対応し、USB-Aと2ポート同時に使う場合は合計最大15Wです。充電用ケーブルは付属しないため、必要なケーブルを別に用意します。
5,000mAh級より充電回数に余裕を持たせつつ、今回の20,000mAh級より軽く抑えたい人に向きます。
複数回の充電を優先するなら|エレコム DE-C52-20000BK(20,000mAh)
持ち運びの軽さより、停電中に複数回充電できる余裕を優先する場合は、20,000mAh級が候補になります。
公称容量20,000mAh、重量約420gです。
エレコム公式「20000mAh 2C PD20W モバイルバッテリー」では、満充電した状態で3,000mAhのスマートフォンを約3.9回充電できる目安が示されています。
USB Type-Cポートを2つ備え、いずれもUSB Power Delivery 20Wに対応します。USB Type-C-USB-Cケーブル(約0.5m)が付属します。
約420gあるため軽さでは不利ですが、1台のスマホを複数回充電したい場合や、家族のスマホも含めて充電できる余裕を持たせたい場合に向きます。
まとめ:自分に必要な充電回数と持ち方から選ぶ
防災用モバイルバッテリーは、最初からmAhの数字で選ぶ必要はありません。
まず、停電したときにスマホをあと何回くらい充電したいかを考えます。
軽さを優先するなら5,000mAh級、容量と携帯性のバランスなら10,000mAh級、複数回の充電に余裕を持たせたいなら20,000mAh級が候補になります。
また、大容量を1台持つだけでなく、普段使いと自宅用など、複数のモバイルバッテリーに分けて備える方法もあります。
何回分ほしいか、どこで使うか、何台に分けて持つか。そこまで決めれば、自分に合うモバイルバッテリーの備え方を選びやすくなります。
