高齢の親に備える防災セットは、いちばん軽いものを選べば安心というわけではありません。今回比べる3セットは、重さがおよそ2kgから6kg台まで幅があり、さらにリュックとして背負うのか、キャリーとして転がせるのかという運び方の違いもあります。
市販のセットには、常備薬や老眼鏡、補聴器といった、その人に必要な物までは入っていません。まずは重さと運び方の関係から見ていきましょう。
約2kg〜6kg台でも、軽さだけでは持ち出しやすさは決まらない
今回比べる3セットのセット重量は、約1.97kg、約4.1kg、約6.6kgと大きく異なります。数字だけを見れば、軽いセットのほうが親には向いていると考えたくなります。
ただ、重さの差には理由があります。軽いセットは水や食品が入っておらず、重いセットにはあらかじめ飲料水や保存食、ライト類までまとまって入っています。重量だけでなく、何が入っているから重いのかを見る必要があります。
もう一つ、見落としやすい点があります。セットが重くても、転がせる場所では背負い続けずに運べる構成があります。重さの数字だけで決める前に、そもそもどう運ぶ構成なのかを整理しておきましょう。
約1.97kgはリュックのみ|4kg台・6kg台はキャリー対応
約1.97kgのYBG-30はリュックのみですが、4kg台のRBS-200Gと6kg台のものすごい防災セットには、転がして運ぶ選択肢があります。
YBG-30はリュック型で、キャリー機能はありません。
ゼニスのRBS-200Gは、リュックとしても使えますが、折りたたみキャリーが付属しており、平らな場所では転がして運べます。重量はYBG-30より増えますが、背負わずにキャリーで運べる場面があります。
LA・PITAの「ものすごい防災セット」1人用は、背負う・持つ・転がすの3通りに対応するキャリーリュックです。セット自体は最も重くなりますが、水・食品・ライト類まで含めて一つにまとまっています。
ここで大切なのは、「重い=運びにくい」「キャリー=必ず楽」と単純に決めつけないことです。重さと運び方は別々に確認する必要があります。では、実際の数字と中身を並べて見てみましょう。

3セットの違いは「軽さ」「転がせるか」「最初から入る物」に出る
約1.97kgのYBG-30は最も軽い一方、水・食品は入っていません。4kg台・6kg台の2セットは重くなりますが、キャリーで転がす選択肢があり、水・食品も含まれます。違いを一覧で確認すると、単純な重量順では選べない理由が見えてきます。
| セット | 楽天市場価格 | セット重量 | 運び方 | 水・食品 | 照明・情報 | 不足・見落としやすい点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 山善 YBG-30(通常18L) | 2,799円 | 約1.97kg | 背負う(リュックのみ) | 水・食品は含まれない(給水バッグのみ) | 2WAY懐中電灯 | 水・食品なし |
| ゼニス リュックバッグ避難セット(キャリー付き)RBS-200G | 22,000円 | 約4.1kg | 背負う/転がす(折りたたみキャリー付き) | 保存水500ml×2、ライスクッキー×2 | COB伸縮2WAYライト(単4形電池4本は別売) | ライト用電池4本は別売。個人宅配送は送料別途(1点1,650円) |
| LA・PITA ものすごい防災セット 1人用Mサイズ | 25,080円 | 約6.6kg | 背負う・持つ・転がす(3WAY) | 保存水500ml×4、選べる保存食3食 | 多機能ダイナモラジオライト、防滴調光ランタン(テスト用電池付属) | セット重量は3セット中最も重い(約6.6kg) |
価格は楽天市場の商品ページで確認した税込価格です。価格・在庫・送料は変わるため、購入前に商品ページで確認してください。
表からわかるように、山善のYBG-30は最も軽い一方で、飲料水も食品も入っていません。ゼニスのRBS-200Gは水と食品が少量含まれ、キャリーとしても使えますが、重量はYBG-30の倍以上になります。LA・PITAのものすごい防災セットは、水・食品・ライト類までまとまって入っている代わりに、セット重量は3つの中で最も重くなります。
「軽いから安心」でも「キャリーだから安心」でもなく、何が入っていて、それをどう運ぶかを合わせて見る必要があります。それぞれの中身を具体的に見てみましょう。
山善 YBG-30|約1.97kgの軽量リュックだが、水・食品は入っていない
山善 YBG-30(通常18Lタイプ)は、3セットの中で最も軽い、約1.97kgのリュック型です。サイズは幅32×奥行16×高さ43cmで、懐中電灯やお薬ケース、携帯トイレ、アルミブランケット、非常用給水バッグなど30点がセットされています。
軽さの理由は、飲料水や食品が入っていないことです。非常用給水バッグは水を運ぶための空の袋であり、あらかじめ水が入っているわけではありません。食品も同様に含まれていないため、実際に持ち出す際は水と食料を別に用意する前提になります。
親に用意する場合、まず本人が背負って運べる重さかどうかを確認したうえで、水・食品・常備薬・老眼鏡などをどこまで追加するかを考える出発点として位置づけるとよいセットです。
ゼニス リュックバッグ避難セット(キャリー付き)RBS-200G|約4.1kgでリュックとキャリーを使い分けられる
ゼニス リュックバッグ避難セット(キャリー付き)RBS-200Gは、約4.1kg、サイズ幅300×奥行130×高さ450mmのセットです。避難用リュックバッグに折りたたみキャリーが付属し、背負う方法と、キャリーで転がす方法を選べます。
中身には保存水500ml×2本とライスクッキー2個のほか、COB伸縮2WAYライトが入っていますが、このライトは単4形電池4本が別売です。購入後に電池を用意し、実際に点灯できるかどうかを一度確認しておく必要があります。
もう一つ確認しておきたいのが配送条件です。この商品は法人名・屋号での注文であれば送料無料ですが、個人宅への配送では1点につき送料が別途発生します。実家など個人の住所へ送る場合は、この送料も含めた金額で検討してください。
個人宅配送の場合は送料が別途必要。
LA・PITA ものすごい防災セット1人用|約6.6kgだが水・食品・ライト類まで入る3WAY
LA・PITA「ものすごい防災セット」1人用Mサイズは、3セットの中で最も重い約6.6kgのキャリーリュックです。リュック単体は約2kgですが、水・食品・ライト・寝具などを含むセット全体では約6.6kgになります。背負う・持つ・転がすの3通りに対応しており、メーカーは悪路ではリュック、体力が続かないときはキャリーという使い分けを案内しています。
中身には長期保存水500ml×4本、選べる保存食3食分に加えて、多機能ダイナモラジオライトや防滴調光ランタン、レスキュー寝袋、防災エアーマットなど、避難生活を想定した装備がまとまって入っています。ライト類にはテスト用の電池が付属していますが、平時に本人が点灯方法を確認し、保管時には電池の状態も確認しておく必要があります。
キャリー型でも、階段・段差・悪路まで転がせるとは限らない
ここまでで、キャリーが使えるセットには、背負わずに転がして運べる場面があることが分かりました。ただ、キャリーを選べば運び方の問題が解決するわけではありません。
自宅の玄関に段差がある、エレベーターが止まって階段を使う、避難先までの道が舗装されていない、といった場所では、キャリーで転がせず、背負う・持ち上げるなど別の運び方が必要になる場合があります。LA・PITAのものすごい防災セットも、メーカー自身が悪路ではリュックとしての使用を案内しており、キャリーを万能とは説明していません。
親の自宅から避難先までの経路に、段差・階段・未舗装の道がどの程度あるかを、セットを選ぶ前に一度確認しておく必要があります。キャリー付きでも、背負ったり持ち上げたりする場面が生じる可能性があります。
政府広報の「高齢者約6kg」は、本人の安全上限ではない
非常用持ち出し袋の重さについては、政府広報オンライン「防災特集 ACTION01 災害に事前に備える」には、持ち出せる量として子どもや高齢者で約6kgを想定しておくという記載があります。あわせて、高齢者などの要配慮者は、薬など避難所生活や介助生活に必要な物を確保しておくという案内もあります。
ただし、この約6kgは、年齢や体格、歩行状況ごとの安全上限を示した数字ではありません。「6kgまでなら安全」「6kgを超えたら使えない」という基準として扱うものではない点に注意が必要です。
今回比較したLA・PITAのものすごい防災セットは約6.6kgで、この参考値をすでに上回っています。だからといって、このセットが高齢者に不向きと結論づけることはできません。転がして運べるキャリー機能を含めて、本人が実際に運べるかどうかで判断する必要があります。
今回の3セットには「親本人の薬・老眼鏡・補聴器」は入っていない
東京都防災ホームページ「高齢者の地震対策」や東京防災2023、東京くらし防災では、高齢者の非常用持ち出し品として、常備薬やお薬手帳、老眼鏡、補聴器と予備電池、入れ歯といった、その人が日常的に使っている物を用意しておくよう案内されています。
今回比較した3セットには、いずれもこうした個人固有の品は入っていません。お薬ケースが入っているセットもありますが、これは薬を入れるためのケースであり、常備薬そのものが入っているわけではありません。今回の3セットを買っただけでは、親本人にとっての備えは完成しません。
こうした個人用品は、市販の完成セット任せにせず、その人に合わせて追加します。本人が普段使っている薬や眼鏡、補聴器の予備電池などを、家族と一緒に確認しながら追加する作業が必要です。すべての高齢者に同じ品目が必要というわけではなく、その人の体調や生活に合わせて足す物を決めることになります。
実家に送って終わりにしない|本人が運ぶ・開ける・ライトを使う
セットを選び、必要な個人用品を追加できたら、最後にもう一つ確認したいことがあります。それは、本人が実際にそのセットを運び、開け、中のライトなどを使えるかどうかです。
防災セットは、実家に送って置いておくだけでは、災害時に本人が使える状態になっているとは限りません。玄関などの置き場所から本人がリュックやキャリーを取り出せるか、リュックなら背負えるか、キャリーならハンドルを引き出して転がせるか、バッグを実際に開けられるか、懐中電灯やランタンを点灯できるか、常備薬や老眼鏡をどこに入れたか把握できているか。こうした点は、仕様書だけでは分かりません。
長距離を歩かせる訓練にする必要はありません。無理のない範囲で、置き場所からセットを取り出し、背負う・転がす・開ける・ライトを点灯する、という一連の動作を本人に試してもらうだけで十分です。
体力や健康状態によっては、家族や近隣、支援者と分担することも選択肢になります。
一度試せたからといって、災害時も同じようにできると保証するものではありませんが、買って送るだけで終わらせず、本人が使える状態まで確認しておくことが大切です。
まとめ|高齢の親の防災セットは「本人が運べて使えるか」で選ぶ
高齢の親に備える防災セットは、一番軽いものでも、キャリー付きだから安心というものでもありません。今回比較した3セットは、約1.97kg・約4.1kg・約6.6kgと重さが大きく違い、それぞれ背負う・転がす・その両方という運び方の違いもありました。
今回の3セットでは、重量が増えるにつれて、水・食品やライトなど最初から含まれる物も増えていました。大切なのは、重さと運び方をセットで見て、本人の避難経路で実際に運べる構成を選ぶことです。そのうえで、常備薬や老眼鏡、補聴器といった本人固有の品を追加し、最後に本人がセットを開けて使えるかどうかまで確認する。ここまでできて、初めて親のための備えになります。
