災害が起きると、いつも使っているアレルギー対応食品や、行きつけの店で買える食品が手に入りにくくなることがあります。普段から本人が食べられる食品を、家庭で備えておく必要があります。
このとき、「アレルギー対応」「○品目不使用」という商品名や表示だけを見て選ぶと、思わぬ見落としが起こります。○品目不使用という表示は、あくまでそのメーカーが対象とした品目の範囲での情報であり、本人の原因食物がその対象に含まれているとは限らないためです。
この記事では、食物アレルギーがある本人、またはご家族・お子さんのために非常食を備えたい方に向けて、原材料表示とメーカー公式情報をどのような順番で確認すればよいかを整理します。あわせて、メーカー公式で原材料・アレルギー情報を確認しやすい備蓄食品を3つ紹介します。
食物アレルギーがある場合は、自分が避ける必要のある食材を確認しやすい商品から候補を絞ると、非常食を選びやすくなります。購入するときは、最新のパッケージ表示とメーカー公式情報を確認してください。
食物アレルギーがある人は「商品名」より原材料表示を先に見る
食物アレルギーの原因食物は人によって異なります。同じ「アレルギー対応」という言葉でも、対象としている品目はメーカーごとに異なります。
「特定原材料等○品目不使用」という表示は、確認材料の1つであり、それだけで安全性を判断できるものではありません。表示の対象になっていない食物にアレルギーがある場合、その食物が使われていないかどうかは、この表示だけではわかりません。
そのため、非常食を選ぶ際は次の順番で確認します。
まず、商品パッケージの原材料名とアレルギー表示を見ます。次に、メーカー公式サイトの商品ページで、同じ内容が確認できるかを見ます。さらに、メーカーに食物アレルギーへの取り組みを説明した専用ページがある場合は、そちらもあわせて確認します。

また、食品表示の制度自体も更新されることがあります。2026年4月1日には、消費者庁により食品表示基準が改正され、それまで表示推奨品目だったカシューナッツが表示義務のある特定原材料に追加されるとともに、新たにピスタチオが表示推奨の特定原材料に準ずるものに追加されました(消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」)。これにより、表示義務のある特定原材料は9品目、表示推奨の特定原材料に準ずるものは20品目となり、合計29品目になっています。
なお、この2つの改正は経過措置の扱いが異なります。消費者庁「アレルゲンを含む食品に関する表示について」(令和8年4月1日事務連絡)によると、カシューナッツの義務表示化には2028年3月31日までの2年間の経過措置期間が設けられており、この期間中は従来の表示のままでも販売できます。
一方、ピスタチオの推奨表示への追加については、同事務連絡に経過措置の記載はなく、可能な限り速やかに表示するよう求められています。そのため、メーカーや商品によって、カシューナッツとピスタチオそれぞれの表示更新時期に差が生じる可能性があります。
店頭やオンラインショップの商品ページでは、しばらくの間「28品目」という従来の表現と「29品目」という新しい表現が混在する可能性があります。メーカーが「28品目」と記載しているものを、編集部側の判断で「29品目」に書き換えることはできません。表示されている品目の範囲と、購入時点の最新パッケージ表示をあわせて確認することが基本になります。
災害用には少なくとも2週間分を平時から備える
災害が起こると、食物アレルギー対応食品を含む特殊食品は、一般の食品よりも手に入りにくくなる可能性があります。農林水産省「アレルギーの方こそローリングストック!」では、食事に配慮が必要な方について、少なくとも2週間分の食品を家庭にストックすることがすすめられています。
2週間分となると、置き場所や費用の面で身構えてしまうかもしれません。ここで役立つのが、普段食べている食品を少し多めに買い置きし、古いものから消費して、消費した分を買い足すローリングストックの考え方です。特別な非常食だけをまとめて用意するのではなく、いつもの食事で使っている、本人が食べられることを確認済みの食品を中心に、買い置きの量を少し増やすという方法です。
普段から食べ慣れている食品であれば、味や食感をあらかじめ把握できます。次の章では、こうした備えに組み合わせやすい、原材料・アレルギー情報をメーカー公式で確認しやすい備蓄食品を紹介します。

アレルギー情報を確認しやすい備蓄食品を比較
食物アレルギーがある場合は、まず自分が避ける必要のある原材料について、メーカーがどのような不使用情報を示しているかを確認します。「28品目不使用」など対象が具体的に示されている商品もあれば、不使用の表現はあっても品目数までは商品ページで確認できない商品もあります。
そのうえで、主食として備えたいのか、間食やエネルギー補給として加えたいのかを見ます。さらに、断水時でも使いやすい食品を選びたい場合は「調理条件」も確認してください。水やお湯が必要な食品と、開封してそのまま食べられる食品では、災害時の使いやすさが異なります。
| 食品名 | 役割 | メーカー公式のアレルギー情報 | メーカーが示す不使用対象の表現 | 保存期間 | 調理条件 | 内容量 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| アルファー食品 安心米 五目ご飯 | 主食候補 | 商品ページに記載あり/食物アレルギーへの取り組み専用ページあり | 特定原材料等(28品目)不使用商品(取り組みページ冒頭に29品目に関する注記あり) | 5年間 | 水またはお湯が必要(熱湯15分/水60分) | 100g |
| 尾西食品 尾西のライスクッキー いちご | 菓子・補助食候補 | 商品ページに記載あり/アレルギー情報一覧ページあり | アレルギー物質(特定原材料等)28品目不使用、ナッツ類不使用 | 5年間 | 調理不要 | 8枚(48g) |
| 井村屋 えいようかん | 補助食・エネルギー補給候補 | 商品ページに「アレルギー物質不使用」と記載(具体的な品目数の記載は商品ページ上に見当たりません) | アレルギー物質(特定原材料等)を含む原料不使用 | 5年6か月 | 調理不要 | 300g(60g×5本) |
3食品は、原材料やアレルギー情報を確認できるだけでなく、備蓄の中で担う役割が異なります。主食を備えたいなら安心米 五目ご飯、持ち出しやすいお菓子・間食を加えたいなら尾西のライスクッキー いちご味、少量でエネルギーを補える食品を備えたいならえいようかんが候補になります。
まず自分が避ける必要のある食材について最新の表示を確認し、その条件を満たす食品の中から、主食・間食・エネルギー補給のどこを備えたいかで選ぶと候補を絞りやすくなります。
アルファー食品 安心米 五目ご飯
うるち米を主原料に、ごぼう・たけのこ・こんにゃく・しいたけ・にんじんの5種の具材を合わせたアルファ化米です。お湯または水を注ぐだけで、お茶碗大盛り1杯分程度のご飯ができあがります。
五目ご飯の特徴:
内容量は100g(できあがり量約270g)、賞味期限は5年間です。原材料は、うるち米(国産)、味付乾燥具材(ごぼう、水煮たけのこ、こんにゃく、食塩、乾しいたけ、乾燥にんじん、植物油、砂糖、かつお節エキス)/調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、加工デンプン、酸化防止剤(ビタミンE)、水酸化カルシウムです。1袋(100g)あたりの熱量は365kcalです。調理は、熱湯の場合15分、水(約15℃)の場合60分です。
メーカー公式のアレルギー情報:
アルファー食品オンラインショップ「安心米 五目ご飯」商品ページには、「本品に含まれるアレルギー物質(特定原材料及びそれに準ずるものを表示)」欄に「なし」と記載され、あわせて「特定原材料等(28品目)不使用商品」という表現が使われています。(確認日: 2026年8月22日)
一方、アルファー食品株式会社「食物アレルギーへの取り組み」ページの冒頭には、「令和8年4月1日に消費者庁より発表された特定原材料等29品目は使用しておりません。HPの掲載内容につきましては、随時更新いたします。」という注記があります。同じページの本文側は、現時点でも「食物アレルギー対応商品 特定原材料等(28品目)不使用の取り組み」という見出しのまま、特定原材料8品目・特定原材料に準ずるもの20品目、合計28品目を掲載しています。つまり、ページ冒頭の注記では29品目という新しい表現が使われている一方で、ページ本文の一覧はまだ28品目時点の内容にとどまっているようです。(確認日: 2026年8月22日)
注意点:
公式サイト内でもアレルギー表示の更新時期がそろわない場合があります。購入時は、手元の商品パッケージに記載された原材料・アレルギー表示と、メーカーの最新情報をあわせて確認してください。
「28品目」「29品目」のどちらの数字が書かれているかにかかわらず、まずご自身の原因食物がその一覧に含まれているかどうかを確認してください。含まれていない場合や判断に迷う場合は、パッケージ記載の原材料名・アレルギー表示を優先します。
購入前には、必ず最新のパッケージ表示もあわせてご確認ください。また、詳しい製造環境・コンタミネーション対策の対象範囲については、購入前にメーカーへ確認してください。
尾西のライスクッキー いちご
新潟県産の米粉を使った、パティシエ監修のクッキーです。通常のクッキーに使われる小麦・卵・乳を使わずに作られています。
ライスクッキーの特徴:
内容量は8枚(48g)、原材料は、米粉(米(国産))、マーガリン、コーンフラワー、砂糖、ライスショートニング(米油)、ストロベリーペースト、コーンスターチ/香料です(マーガリンの原材料は「なたね油」です)。1箱(8枚・48g)あたりの熱量は263kcalです。調理は不要で、そのまま食べられます。「5年保存」です。
メーカー公式のアレルギー情報:
尾西食品株式会社「尾西のライスクッキー いちご」商品ページには、「アレルギー物質(特定原材料等)28品目不使用。ナッツ類不使用。」と記載されています。あわせて、対象となる28品目の一覧も掲載されており、義務表示の特定原材料としてカシューナッツを含む9品目、推奨表示の特定原材料に準ずるものとして19品目(この一覧の時点ではピスタチオは含まれていません)が示され、合計28品目となっています。つまり、カシューナッツについては新しい区分(義務表示)にすでに更新されている一方、ピスタチオはまだ一覧に反映されていない状態です。(確認日: 2026年8月22日)
尾西食品株式会社「アレルギー情報一覧」ページでは、商品ごとのアレルギー物質の使用有無を一覧で確認できます。また、尾西食品株式会社「尾西食品の取組み」ページでは、アレルギー対応製品について完全に隔離された専用の作業場を使用し、包装もクリーンブースで囲われた専用の包装機で行っていること、ライスクッキーは専用の工場で製造・包装していること、定期的にアレルギー物質検査を実施していることが説明されています。(確認日: 2026年8月22日)
アレルギー上の注意点:
「○品目」という数字だけでなく、対象となる品目名まで確認してください。自分が避ける必要のある食材が含まれていないか、購入時のパッケージ表示と尾西食品の最新情報を照らし合わせます。
販売上の補足:
尾西食品公式の楽天市場店はまとめ販売が中心です。少量から備えたい場合は楽天市場内の防災用品専門店でも購入できますが、販売店がメーカー公式店かどうかは購入前に確認してください。
井村屋 えいようかん
長年の羊羹製造技術を生かして開発された、備蓄用のミニようかんです。1本でご飯小盛り1杯分に相当するエネルギーを補給できます。
えいようかんの特徴:
内容量は300g(60g×5本)、原材料は砂糖(国内製造)、生あん(小豆)、水あめ、寒天です。1本(60g)あたりの熱量は171kcalです。水がなくてもそのまま食べられ、フィルムを引っ張るだけで開封できます。賞味期間は「5年6か月」です。
メーカー公式のアレルギー情報:
井村屋株式会社「えいようかん」商品ページには、「アレルギー物質不使用」と記載されています。井村屋グループ「防災備蓄用『えいようかん』」(CSR情報)にも、「アレルゲンフリー:アレルギー物質(特定原料等)を含む原料は使用しておりません」という説明があります。一方で、商品ページ上に「28品目」「29品目」といった具体的な品目数の明記は見当たりませんでした。(確認日: 2026年8月22日)
注意点:
楽天市場の販売ページでは「28品目不使用」などと記載されている場合があります。品目数だけで選ばず、購入する商品の最新パッケージとメーカー公式の原材料・アレルギー情報まで確認してください。
3食品は「安全性の順位」ではなく役割で組み合わせる
紹介した3食品は、優劣を比較するものではなく、食品としての役割が異なります。
主食候補としては安心米 五目ご飯、菓子・補助食候補としてはライスクッキー、エネルギー補給の補助食候補としてはえいようかんが挙げられます。備蓄全体を組み立てる際は、こうした役割の違いを踏まえて組み合わせることになります。
ただし、これはあくまで一般的な位置づけの整理であり、商品名だけを見て「これなら本人に合う」と判断できるものではありません。この記事で紹介したどの商品についても、本人が実際に食べられることを、原材料表示とメーカー公式情報の照合によって確認済みであるという前提のうえで、備蓄に組み込むようにしてください。
購入時と入れ替え時にもう一度表示を確認する
長期保存食は、一度購入すれば表示内容も固定されると思われがちですが、実際には次のような変更が起こり得ます。
原材料の変更、食物アレルギー表示制度の改正、パッケージデザインの更新、商品仕様そのものの変更です。今回取り上げたカシューナッツとピスタチオの改正のように、対象品目や経過措置の扱いが品目ごとに異なることもあります。アルファー食品の「食物アレルギーへの取り組み」ページや、尾西食品の「アレルギー情報一覧」のように、同じページの中でも冒頭の注記と一覧本体の更新時期がずれることも実際にあります。
そのため、確認は購入時の1回だけでなく、備蓄品を入れ替えるタイミングでも行うことをおすすめします。ローリングストックのように、普段から食べている食品を消費しながら買い足す方法であれば、買い足すたびに自然と最新の表示を確認する機会が生まれます。これは、備蓄品の賞味期限切れを防ぐことに加えて、表示内容の変更を見落とさないという意味でも役立ちます。
災害時は「食物アレルギーがあることを伝える備え」も必要
ここまでは食品選びを中心に説明してきましたが、災害時には、周囲に食物アレルギーがあることを伝える備えも重要になります。

農林水産省「要配慮者と単身者の食品ストックガイド」では、避難した際に食物アレルギーがあることが周囲にわかるよう、表示カードやビブスなどを身につけることが有効だと案内されています。また、必要な薬などの準備についても、公的資料の中で触れられています。
まとめ:原因食物を確認したうえで、備蓄で足りない役割から選ぶ
食物アレルギーがある場合は、まず自分や家族が避ける必要のある食材が含まれていないかを確認します。商品名の「アレルギー対応」や「○品目不使用」だけで決めず、購入時のパッケージ表示とメーカー公式情報を照らし合わせることが大切です。
そのうえで、条件に合う商品の中から、備蓄で足りない役割を考えます。主食を備えたいならごはん類、持ち出しやすい間食を加えたいならライスクッキー、少量でエネルギーを補える食品を加えたいならようかんが候補になります。
すでに主食が十分あるなら補助食を足す、持ち出し用の食品が少ないなら個包装の間食を加える、といったように、「食べられるか」を確認したあとに「何を補いたいか」で選ぶと、自分の備蓄に合う非常食を絞りやすくなります。
